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沙織さんは立ち上がると私の目を見て言った。
「返してもらう。それだけよ」
背中にゾクゾクするものが走った。
あれは間違いなく女の目だ。
「仕事があるから先に失礼するわ。コーヒーは私からのおごりってことで。話を聞いてくれたお礼よ。それじゃ」
沙織さんは伝票を持って入口へと歩いて行った。
「嫌な女」
ひよりの言葉にまるで呪縛が解かれたみたいに体の力が一気に抜けた。
「何あれ?なんかムカつく」
「どうやら沙織さんはうっすらと気が付いてるんじゃないかしら」
千恵が私の方を向いて言った。
「それって私と課長の事?」
「女の勘ってやつじゃない?先に牽制したってことじゃないかしら」
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