視線

16/21
660人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「で?何で言わなかったんだ?」 「それは……」 私は何も言えなくなってしまった。 結局自分がみじめになるのが嫌だっただけだから。 課長はコーヒーを飲みながら私の言葉を待っていた。 「ったく……よけい拗れたんじゃないのかよ」 痺れをきらしたのか、課長が口を開いた。 「周りは俺達の事知ってんだ。沙織の耳にだって必ずは入るだろ。だったら最初から言ってればいいものの……。お前ほんっとあほだな」 ほんと。私あほだよな……。 私はズーンと落ち込んでしまった。 「あのなぁ……」 私はそっと課長に目を向ける。 「もう少し俺を信用しろよ」 課長は空いてる腕を私の首に巻き付け私を自分の方に引き寄せた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!