千恵の恋

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「あ……あの部長……」 「改めて俺の方から言わせてもらっていいかな?」 部長はそう言うと軽く咳払いをして姿勢を正す。 私もそれにつられて姿勢を正した。 「春川千恵さん三十路過ぎのバツイチおじさんだけど……。こんな俺でよかったら……お付き合いしてくれませんか?」 「はい」 私は迷うことなく返事をした。 「はぁ~緊張した~」 部長は本当に緊張していたのだろう。 テーブルに体を伏せった。 「私もです。」 「春川さんも?馴れてると思ったけど」 部長は顔だけを上げて言った。 「そんな事ありません……。本当に好きな人から告白された事ないですから。それと……二人っきりの時は千恵って呼んでください」 部長がガバッと起き上がり驚いた顔をする。 「それは……」 「彼氏の特権です」 部長は落ち着かないのか頭を掻いたりそっぽを見たり不自然な動作をしている。 やっと決心がついたのかやっと私の顔を見て言った。 「ゴホン 千……千恵。……そ……そろそろ帰ろうか?」 「はい」 こうして私は人生で初めて大好きな人の彼女になった。 自分の幸せの為にお金ではなくあったかい愛を選んだ。 後悔はしない絶対に……。
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