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「松本。ちょっとこいつ送りに行ってくる」
課長はトモキ君の頭を撫でながら言う。
トモキ君はとても嬉しいそうだ。
きっと頭を撫でられてるからだろう。
「はい……」
私はそれしか言えなかった。
二人は私に背を向けて歩き出す。
手はしっかりと握られたまま。
そではまるで本当の親子の様に……。
私は二人の背中が見えなくなるまでじっとしていた。
課長がトモキ君を送りに行ったという事は母親の事を知っているということ。
その事実が今はっきりと分かったのだから。
沙織さんが母親なのかと思ったがトモキ君の母親は外国人。
少しホッとしたが複雑な心境だ。
私はマンションの中に入りエレベーターに乗り込む。
そして深いため息を落とした。
部屋に入り冷蔵庫にさっき買ってきた食材を入れる。
それからは何もする気が起きなかった。
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