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沙織があんな態度に出たのはのりの言うとおり焦ってるって事か。
だからって何でいまさら子供の話を持ち出すんだ?
「なぁ。何でだと思う?」
「ん?」
「何で沙織はいまさら子供の話を持ち出したんだと思う?焦ってるのは分かったけど本当に貴史の子供だったらもっと早く言うことじゃねーのか?」
俺はちづの頭を撫でながら言った。
もし本当に貴史の子供だったら今まで黙ってた事が納得いかない。
「私にもそれが分からないのよね。美由ちゃんの反応から見て本当に子供がいるみたいだし……。5才っていったら貴史くんと付き合ってる時に出来た子供って事になるでしょ?仕事を取って貴史くんを捨てたのに子供を生むって考えられない。私だったらちゃんと相手と話し合うけどな」
「だよな。貴史は知ってるのかな?」
「さぁ。でも預かってたわけでしょ?どこまで沙織が貴史くんに話してるかはわからないけど」
俺が一番心配してることは美由ちゃんの事だ。
「私が今一番心配なのは美由ちゃんよ」
俺はのりの顔を見た。
やっぱりのりも俺と同じ事を考えていたのか。
「子供の事を言われたら身を引くしかなくなるじゃない?美由ちゃんは優しい子だもの。きっと子供の幸せを考えるはず。沙織はきっとそれを分かってて言ったはずよ。貴史くんがほしいならもっと他に手はあるはずなのにいきなり最終兵器を落としたのよ」
美由ちゃんはどう決断をだすのか今はわからない。
「修は美由ちゃんの事可愛がってたものね。私だってそうよ。だからすごく心配」
俺達はしばらく黙って公園の景色を眺めていた。
「美由ちゃん……へんな気起こさないといいけど……」
のりがポツリと呟いた。
俺は返事をせず同じ事を考えていた。
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