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白紙の契約
どうやって帰ってきたかは覚えていない。
私は自分の部屋のソファーの上でうずくまっていた。
ただ修さんの店を出る時に「送るよ」って言ってくれた修さんに断りを入れたこと。
帰り間際にのりさんから「絶対また来てね」と言われたこと、それしか覚えていなかった。
考えてしまうのは沙織さんの言った言葉たち。
トモキ君が沙織さんの子供で、課長がその父親。
本当の事か私には解らない。
でも子供の事で嘘をつくとはどうしても思えなかった。
ピンポーンとチャイムが鳴った。
時計を見ると夕方6時。
課長が迎えにきたのだろう。
三人でトモキ君の母親に会いに行く。
それはつまり沙織さんに会いに行くということ。
今の私にはそんな元気も勇気もない。
きっとどんな思いをするか分かってるから。
居留守でもしょうか……。
そんな事を思っているとき二度目のチャイムがなった。
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