白紙の契約

25/40
前へ
/40ページ
次へ
~美由~ 課長の部屋の前で行ったり来たり。 なかなかチャイムを押すことが出来ない。 覚悟決めたのに何やってんだろ。 そう思いながらもなかなか押すことが出来ない。 こんなんじゃダメだ。 私は意を決してチャイムを押した。 10秒もたたないうちに課長が顔を出す。 ドキッと心臓が飛び出ちゃうんじゃないかと思うぐらい音をたてた。 「どうした?入れよ」 たった一日声を聞かなかっただけなのに懐かしくさえ感じられた。 課長に促され玄関の中に足を踏み入れたがその先になかなか進めない。 極度の緊張が私を襲っていた。 「松本?」 名前を呼ばれガチガチの体がもっと固まる。 お邪魔しますと小さく言って私は部屋の中に入った。 「コーヒー入れるから」 課長がキッチンの中に入っていく。 私は部屋を見渡す。 殺風景な部屋は相変わらず。 「どうした?座れよ」 コーヒーを両手に抱えた課長が顎で促したのは見慣れたソファー。 課長は所定の場所に座るとコーヒーを置いた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

684人が本棚に入れています
本棚に追加