白紙の契約

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なかなか座らない私を課長が見上げる。 「何かあったのか?」 心配そうに見つめる課長を見ると心が揺らぐ。 「課長……」 「そーいえばトモキがお前に会いたがってたぞ」 「トモキ君が?」 「トモキはお前に懐いてたからな」 私だってトモキ君に会いたかった。 でも……。 課長が立ち上がった気配があった。 「ホントにどうした?」 私の前に立った課長が私の肩に手を置く。 ビクッと体が反応した。 きっと課長にも伝わっただろう。 「一つ課長に聞きたい事があります」 私は顔を上げて課長を見つめた。 これはずっと心の中で考えていたこと……。 「トモキ君の母親が沙織さんって知ってたんですよね?」 「お前なんでそれを……」 その言葉だけで知っていたという事が読み取れた。 ひどいです……課長。 「知ってて私にトモキ君の面倒を見させてたんですよね」 課長は黙っている。 私は小さく息を吐くと課長を再度見つめて言った。 「課長……。恋人契約を解消させて下さい」
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