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美由ちゃんは貴史とは付き合っていなかったが、貴史を想ってくれてることは伝わってきた。
そんな美由ちゃんが諦めようとしている。
それに……。
私にも分かる。
貴史も美由ちゃんを大事にしてることが。
そんな二人を引き裂こうとするなんて……。
「許せないわね」
私は呟いた。
まずは貴史に事実確認しようと電話をかけようとしたが、手を止める。
貴史は貴史で色々調べてるかもしれない。
だったら私は私で調べてから貴史に話をすればいい。
もし本当に貴史の子供だとしたら財閥に混乱を招く。
貴史の子ということは奥田財閥の跡取りという事になるのだから。
事は慎重にしなければならない。
ましてやお父様達の耳に入ったら大変なことになる。
内密に片付けないと……。
私は携帯を持ち直すと電話をかけた。
「……私よ。ちょっと調べてもらいたい事があるの。…… ……頼んだわよ」
私は電話を切るとシートに深く座り、ため息をついた。
「大丈夫かしら……美由ちゃん」
一番心配なのは美由ちゃんの事。
貴史の事を諦めてほしくない。
だって貴史が変わったのは美由ちゃんのおかげだから。
「まったく。ムカつくわね」
私はエンジンをかけると猛スピードで夜の街を走った。
苛立ちを抑えるかのように……。
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