優しい誘惑-1

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俺は松本を抱きしめながらそんな事を考えていた。 ふと、松本と目が合ってキスをしたい衝動にかられた。 だが俺達は今は恋人でも契約してるわけでもない。 俺は気持ちをなんとか抑え、松本が少しでも元気になるよう励ました。 とにかく、まずは沙織と話をしなくてはならない。 俺は会議室を出ると沙織に電話をかけた。 「くそっ!」 虚しく留守電のアナウンスが流れる。 まだ社内にいるのか? 少し探してみるか。 俺は沙織を探そうとエレベーターに乗ろうとした時、電話が鳴った。 発信者は沙織だった。 「もしもし」 「貴史?電話に出れなくてごめんなさい」 「今何処にいる」 「もう外よ。さっきまで会社にいたんだけど」 ああ。知ってるよ。 「時間作れないか?」 俺は余計な事は言わず用件だけを言った。 「そうねー。明日の夜なら空いてるわ」 「じゃ明日。場所はまた連絡する」 俺はそのまま電話を切った。 丁度エレベーターが来て俺は乗り込んだ。 壁にもたれフゥーと息を吐く。 さっき、沙織の声の様子からは動揺している感じはなかった。 「ほんとに……どうなってんだよ」 そう吐いた時、エレベーターが開き乗り込んできた奴から舌打ちが聞こえた。 長谷部だった。
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