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俺は松本を抱きしめながらそんな事を考えていた。
ふと、松本と目が合ってキスをしたい衝動にかられた。
だが俺達は今は恋人でも契約してるわけでもない。
俺は気持ちをなんとか抑え、松本が少しでも元気になるよう励ました。
とにかく、まずは沙織と話をしなくてはならない。
俺は会議室を出ると沙織に電話をかけた。
「くそっ!」
虚しく留守電のアナウンスが流れる。
まだ社内にいるのか?
少し探してみるか。
俺は沙織を探そうとエレベーターに乗ろうとした時、電話が鳴った。
発信者は沙織だった。
「もしもし」
「貴史?電話に出れなくてごめんなさい」
「今何処にいる」
「もう外よ。さっきまで会社にいたんだけど」
ああ。知ってるよ。
「時間作れないか?」
俺は余計な事は言わず用件だけを言った。
「そうねー。明日の夜なら空いてるわ」
「じゃ明日。場所はまた連絡する」
俺はそのまま電話を切った。
丁度エレベーターが来て俺は乗り込んだ。
壁にもたれフゥーと息を吐く。
さっき、沙織の声の様子からは動揺している感じはなかった。
「ほんとに……どうなってんだよ」
そう吐いた時、エレベーターが開き乗り込んできた奴から舌打ちが聞こえた。
長谷部だった。
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