589人が本棚に入れています
本棚に追加
「長谷部、何の真似だ?」
「かっ、川東部長!」
えへっ。と笑ってみたが……。
「笑って誤魔化すな」
ゴンと頭に鉄拳が降りてきた。
くそーっ。全部あいつのせいだ。
「そんな遊んでる暇があるなら一件でも多く契約結んで来い!」
「はっ、はい!!」
エレベーターが一階に到着したこともあり俺は急いで外に出た。
「ったく。痛ってーな。無駄に体力あるんだよな。あの人」
千恵の彼氏なのは分かっているが俺にとっては鬼部長。
俺は頭を摩りながら駅までの道を歩いた。
しばらく歩いてると車のクラクションがした。
俺には関係ないと思って無視して歩いているとまたクラクションが鳴る。
気になって振り向くと車の窓から顔を出して手を振っている女がいた。
ん?俺の知り合いか?
あんな美人、俺の知り合いにいたっけな?
俺は車に近づく。
あれ?あの女……。
「あなた。長谷部くんよね。貴史の部下の」
ああ。奥田課長の元カノか。
一度しか見たことなかった俺はすぐには分からなかった。
「今から営業?」
「はい。そうです」
「近くまで送るわよ。乗ってかない?」
顔が分からなくても美由達から話を聞いている。
なんとなく胡散臭くて警戒した。
「大丈夫です」
名前なんだっけ……?
あ!桜井沙織だ。
「桜井さんもお忙しいでしょう。どうぞ行って下さい」
俺は営業スマイルで言った。
最初のコメントを投稿しよう!