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「松本さん、なんなの?この図面」
私の席にピシャと叩きつけるように図面を置いた。
その図面は先週ルーク建設との打ち合わせでOKが出た図面だった。
もちろん課長の許可も出ている。
「何か問題ありますか?」
沙織さんの態度に少しムッとしていたがここはグッと抑えて聞いた。
「問題あるからわざわざ来てあげたんでしょ」
沙織さんの横柄な態度に周りの社員も息を潜めていた。
「この図面、あなたが書いたのよね?」
「そうですけど……」
「何なの?この図面。これじゃ私の作品のイメージと合わないじゃない。私は社長から直々に頼まれてこの仕事引き受けたのよ。こんな図面じゃ仕事にならないわ」
「ちょっと待ってください。私たちは沙織さんのデザインした物がより良く……」
「より良くですって?私はデザイナーよ。より良くなんて必要ないわ。書き直して」
沙織さんは机の図面を手に取るとそれを破った。
「あっ……!」
真生が悲鳴に近い声を上げる。
いつの間にかオフィスの中はシーンと静まりかえっていた。
誰かがゴクンと唾を飲み込む音が聞こえるぐらいに。
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