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沙織さんが出て行った後もオフィスの空気変わらない。
「ほら、何してるんですか?みんな手が止まってますよ」
平常心を装って言った。
社員達は仕事を始め、いつもの状態に戻っていく。
「美由さん?」
真生が心配そうに私に声をかけて来た。
私は一呼吸して
「大丈夫。後で課長に話しておくから。それよりも会議に遅れちゃう。それで課長に怒られたらどうしようもないものね」
いつもの口調で言った。
「真生。机の上の図面、捨てといて」
真生の頭を軽くポンポンと叩き私はオフィスを出た。
まだダメだ。もうちょっと我慢して。
私は急ぎ足で廊下を歩く。
そして女子トイレの中に入った。
個室の鍵をかけた途端、我慢してたものが一気に溢れ出した。
悔しい……。
部下の前で罵られた事もそうだが何よりも課長を返せと言われたことが悔しかった。
沙織さんは私たちが終わった事を知らない。
だから平気な顔であんな事を私に言ったのだ。
沙織さんの思い通りになっているというのに……。
私の口からは終わったことは告げたくない。
そう思った。
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