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「何だ?話って」
改めて課長が私と向き合う。
二人っきりで話をするのはあの日以来だ。
緊張が駆け巡った。
「あの……さっき沙織さんがいらして……」
「沙織が?」
あれ?課長は知らなかったのかな?
「ロビーの図面なんですが、書き直せと……」
「はぁ?なんだって!」
課長は声を上げた。
「あれはもうGOサインが出て始まってるはずだろう」
「私もそう言ったんですが……。社長に直接話すからいいと」
課長は黙っていたが、
「分かった。この件は俺がなんとかする」
頼もしい言葉を聞いてホッとする。
「すいません。お願いします」
「それで……か」
課長が何かを呟いた。
「それで泣いて会議にギリギリ来たんだろ?」
私は驚いた。
泣いていた事も課長にはバレバレだった事に。
「お前が仕事場で泣くなんて余程の事だろう。他に何を言われた?」
課長の目は優しくて思わず抱きつきたい衝動に駆られた。
「松本?」
優しい声で呼ばれてまた涙がでそうになった。
「部下の前で……下っ端の私に話しても埒が明かないと……」
ダメだ。泣いちゃダメだ。
私は唇を噛んでグッと堪えた。
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