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次の瞬間ふわっと温かいものに包まれた。
私の好きな匂いが鼻をかすめる。
課長に抱きしめられてると気づくのに時間はかからなかった。
ただ何故?という疑問が頭の中を支配していた。
もう私には抱きしめられる権利はないというのに。
「お前は悪くない」
課長の声が私の体中に響く。
「悪いのは俺だ」
えっ?
顔を上げ課長を見上げた。
課長と目が合う。
優しい顔で見つめられ恥ずかしくてすぐ下を向いた。
課長は抱きしめていた腕を少し緩めると、私を抱きしめたまま片方の手で私の頭を優しくポンポンと叩く。
「お前はちゃんと上司の仕事も部下としての仕事もちゃんとやってる。自信を持って仕事してればいい」
嬉しかった。
ちゃんと見てくれてる人がいる。
それが私が尊敬する人で好きな人だなんて……。
こんな嬉しいことはない。
「とにかくだ」
課長は片手を私の頭に置いたままゆっくりと体を離すと
「お前は自分の信じる事をすればいい。ダメな時は俺がフォローしてやる。俺はお前の上司だからな」
「課長……」
もう一度頭を軽くポンポンと叩かれ「じゃ、後は俺に任せとけ。いいな」と言って会議室を出て行った。
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