優しい誘惑-2

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~貴史~ まさか山下が松本に惚れてるなんて予想外だった。 それに俺の気持ちも見透かされている。 昔からそうだった。 山下は人の心が読めるのか?って思う事がよくあった。 多分客観的に人を見てるんだと思うが。 手強い相手だな。 俺はため息をついた。 俺はチラリと時計を見る。 沙織との約束まであと一時間。 そろそろ行く準備でもするか。 「あれ?課長もう帰られるんですか?」 松本がオフィスに戻ってきた。 「お前はまだ帰らないのか?」 「今日色々あって仕事溜まってるんです」 松本は申し訳なさそうに言った。 「お前も疲れてるだろ。早めに帰れよ」 俺はあいつの頭をポンポンと叩くとオフィスを出ようとした。 「課長!」 ドアに手をかけた時、松本に呼び止められ、振り返り松本を見る。 「今日は本当にご迷惑をおかけしてすいませんでした」 俺に頭を下げる松本。 俺の手が自然と松本の頬に触れる。 一瞬ビクッと体を震わせてたがまっすぐ俺を見上げた。 「何事もなくてホントに良かったよ」 自然と出た言葉。 松本の目から涙が零れ落ちそうになっているのを、俺は指で掬ってやった。 「どうした?」 「あれ?何で涙なんて……」 焦った顔もいとおしい。 「安心したんだろ?」 泣いてもいい。 俺の前だけったったら。 いくらでもお前の涙を掬ってやる。 だからもう少し待っててくれ。 必ず終わらせるから。 「じゃ、帰る。ほどほどにな」 名残惜しい気持ちを押さえつけ俺は沙織と話をつけるため、松本を残し俺はオフィスを出て行った。
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