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「私はこの会社に中途で入ってすぐに海外事業部に配属されました。
そこで私は仕事に対して沢山の事を学び、そして日本へ戻って営業部へと配属になりました。」
課長は淡々と話はじめた。
「海外事業部と営業部との違いは人と接する事。海外事業部では皆ライバルで個人が頑張れば上に上がれる。
だから営業部に配属され沢山の部下を持った時どう接していいか解らなかった。
だが幸い、部下達に恵まれ本来、上に立つ者の立場・責任というものを学んだ。感謝をしなければいけないのは私の方かもしれない。
ありがとう」
課長は私達に向かって頭を下げた。
上司が部下に頭を下げるなんて見たこともない光景に社員たちは少し戸惑っているように見えた。
「ここにいる松本は……」
突然名前を呼ばれて体がビクッとなってしまった。
課長は何を言おうとしているのだろう。
私は下を向いて課長の話を待った。
「私が見込んで育てた人材です。今でも心配でしかたがない。まだまだ未熟な私の大事な部下をどうかみんなで育ててやってほしい。
これは上司としてそして私、個人としてのお願いです。どうか宜しくお願いします」
視線を感じで顔を上げると課長と目が合った。
その目は優しくて身体全体を課長に包まれてる気分になる。
どうしてそんな目で私を見るの?
勘違いしちゃうからやめてほしい。
私はまた下を向いた。
「ルーク商事で学んだ事を糧にしてこれから頑張っていこうと思ってます。この会社で過ごした時間は私の宝です。本当にありがとうございました」
課長がもう一度頭を下げると大きな拍手が会場中に響きわたった。
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