それぞれの道-2

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「もう!そんなに笑うな」 頬っぺたをフニッと掴まれて私は顔を抑える。 その時フワリと後ろから抱きしめられた。 後ろを振り返らなくても誰だか解る。 その温もりと香り。 「あーあ。邪魔が入っちゃった」 山下さんは本気で残念な顔をした。 「何してんだ?」 「何って松本さんが俺の事笑うからお仕置きしてたの」 山下さんは可愛らしく言ってるけど今は全然可愛くないから! っていうかこの状況何とかしてほしい……。 私はまだ抱きしめられたままだ。 きっと離れた場所にはまだ女子社員達がいて見てるだろう。 「奥田。いい加減、松本さん離したら?困った顔してるよ」 山下さんが助け舟を出してくれた。 ゆっくりと私から課長の体が離れる。 急に体が冷えた気がした。 「もう課長急に走らないで下さいよ」 ひよりが息を切らせて側に来た。 えっ?課長走って来たの? って事は山下さんにはそれが見えていた事になる。 「お前……わざとだろ」 「さぁ。何のこと?」 課長と山下さんの会話の意味が私には解るようで解らない。 いい意味で取れば課長は慌ててここに来た事になる。 私と山下さんが一緒にいたから? きっとそれはないだろう。 私は課長がそこまでするに値する人間ではない。
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