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「もう!そんなに笑うな」
頬っぺたをフニッと掴まれて私は顔を抑える。
その時フワリと後ろから抱きしめられた。
後ろを振り返らなくても誰だか解る。
その温もりと香り。
「あーあ。邪魔が入っちゃった」
山下さんは本気で残念な顔をした。
「何してんだ?」
「何って松本さんが俺の事笑うからお仕置きしてたの」
山下さんは可愛らしく言ってるけど今は全然可愛くないから!
っていうかこの状況何とかしてほしい……。
私はまだ抱きしめられたままだ。
きっと離れた場所にはまだ女子社員達がいて見てるだろう。
「奥田。いい加減、松本さん離したら?困った顔してるよ」
山下さんが助け舟を出してくれた。
ゆっくりと私から課長の体が離れる。
急に体が冷えた気がした。
「もう課長急に走らないで下さいよ」
ひよりが息を切らせて側に来た。
えっ?課長走って来たの?
って事は山下さんにはそれが見えていた事になる。
「お前……わざとだろ」
「さぁ。何のこと?」
課長と山下さんの会話の意味が私には解るようで解らない。
いい意味で取れば課長は慌ててここに来た事になる。
私と山下さんが一緒にいたから?
きっとそれはないだろう。
私は課長がそこまでするに値する人間ではない。
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