溢れる涙

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課長が目の前にいる……。 それだけで私の緊張度はマックス。 まともに顔が見られない。 「お前何やってるんだ?」 やっぱり怒ってらっしゃいますよね……。 チラリと顔を見ると冷ややかな目を私に向けていた。 やっぱり……。会いたくなかった。 「おい。顔上げろ」 課長に言われておそるおそる顔を上げる。 「何やってたんだ?」 「すみません……」 「それは返事じゃない」 何だか会社にいる気分になってきた。 よく私はこうやって怒られた。 ”理由を聞いてるのにすみませんは返事じゃない” 課長がよく言っていた言葉だ。 「あの……。蜜兎さんとの電話中に体調を崩してしまいまして……。気が付いたらここに?」 緊張で上手く言葉が出てこない。 「俺言ったよな。無茶はするなって」 「……はい」 私は小さな声で返事をする。 「無茶して倒れて大事な会議をすっぽかすなんて社会人として失格だな」 課長は冷たく言った。 何で……。 どうしてそんな事言われなくちゃいけないの? もとはと言えば課長の所為なのに。 なによ。なによ。なによ!! 悔しくって涙が出そうになる。 「課……。あなたには関係ないことです」 私は冷静を装いながら言った。 「確かに自分の体調管理も出来ないなんて社会人として失格かもしれない。でも……。部外者のあなたには関係ない」 本当は関係なくない。 私は課長との約束を守るために頑張ってきた。 必ずプロジェクトを成功させると……。
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