溢れる涙

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「きちんと上司に説明して了解を得ています。いつまでも上司ぶらないで下さい」 そんな事言いたくないのに……。 凄い事を言っていると私も思っている。 でももう止められなかった。 「あなたは……もう私の上司じゃないんです」 ダメだ。涙が出そう。 「勝手にお邪魔して夕飯までご馳走になってありがとうございました。蜜兎さんに宜しく言っておいて下さい」 私は床に置いてあったバックを手に持つと 「失礼します」 軽く頭を下げ部屋を出た。 部屋を出た途端にドッと湧き出す涙。 本当はそんな事言いたかったわけじゃない。 笑顔で今の仕事のこと話したかった。 もっともっと話したい事が一杯あったのに……。 バカだ私……。 つい課長の言い方にムキになってしまって冷静さを失ってしまった。 どうして素直になれないんだろ……。 私は出口を求め屋敷の中を歩き廻る。 もう!なんなのよー!!この屋敷は!! 出口が解らない迷路の様。 まるで自分の心と同じ。 課長という迷路に私は入り込んでしまった。 進んでも全然出口が見つからない。 道しるべが有っても結局は本当の出口じゃなかったりする。 自分で出口を探せって事か……。 でもその出口を探す前に……。 とりあえずこの屋敷から出してー!! 私は心の中で叫んだ。
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