溢れる涙

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~蜜兎~ 貴史に追い出される形になって部屋を出たけど、美由ちゃんはまだあの部屋にいると確信していた。 私はドアの外で中の様子に耳を傾けていた。 案の定しばらくすると中から話し声が聞こえてくる。 貴史の奴……知ってたのね。 恐らく貴史は美由ちゃんがこの屋敷にいる事を秘書に聞いていたのだろう。 だから仕事を早く切り上げて帰ってきたのかもしれない。 ドア越しだと何を話しているのかはっきりと聞き取れない。 けど何か言い争っているのか? 聞いていると段々内容がわかってくる。 再び様子を伺っているとドアが開いて美由ちゃんが出てきた。 私の存在にも気が付かず廊下を小走りに走っていく。 部屋からはドンとテーブルを叩く音が聞こえる。 まったく……。 二人っきりで話をさせた方がいいかと思ったがどうやら裏目に出たようね。 ホント……。意地っ張りな二人だわ。 私は小さくため息をつくと部屋に入っていった。
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