運命の人

3/31
前へ
/31ページ
次へ
「松本さん、検査の日程なんだけど……」 山下さんが私のデスクにやってきた。 「2月一杯で終わらせるように調整できるかな?」 「なんとかしてみます」 工事はすでに終わり後は一番肝心な検査がたくさん待っている。 室長の山下さんと主任の私にとって一番緊張する仕事だ。 検査に通らなければ竣工する事が出来ない。 「変わったね」 山下さんに言われて顔を上げる。 「もう大丈夫なの?」 山下さんは周りにいる社員に聞こえないように言う。 「今はそれどころじゃ有りません」 「そうだったね」 山下さんは私の頭を軽く叩くと「じゃ頼むね」と言いながら自分のデスクに戻って行った。 いちいち叩かなくてもいいのに……。 私は叩かれた場所を触る。 不快には感じないがやっぱり違う。 課長の手じゃない……。 いかんいかん。 また課長の事を考えてしまった。 私は頭を振ると自分の仕事と向き合った。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

714人が本棚に入れています
本棚に追加