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「松本さん、検査の日程なんだけど……」
山下さんが私のデスクにやってきた。
「2月一杯で終わらせるように調整できるかな?」
「なんとかしてみます」
工事はすでに終わり後は一番肝心な検査がたくさん待っている。
室長の山下さんと主任の私にとって一番緊張する仕事だ。
検査に通らなければ竣工する事が出来ない。
「変わったね」
山下さんに言われて顔を上げる。
「もう大丈夫なの?」
山下さんは周りにいる社員に聞こえないように言う。
「今はそれどころじゃ有りません」
「そうだったね」
山下さんは私の頭を軽く叩くと「じゃ頼むね」と言いながら自分のデスクに戻って行った。
いちいち叩かなくてもいいのに……。
私は叩かれた場所を触る。
不快には感じないがやっぱり違う。
課長の手じゃない……。
いかんいかん。
また課長の事を考えてしまった。
私は頭を振ると自分の仕事と向き合った。
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