新たな出発点

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「それで……。それから30分くらいでホテルを出たわよ」 「はぁ?」 ひよりの声が居酒屋に響く。 「30分って……課長って早漏なの?」 「バカ!」 私はひよりの頭を小突いた。 まぁひよりがそう思うのは、無理はない。 好き合ってる男女がホテルに行って30分で出てくればそう思われても仕方がない。 でも現実は違う。 「だから一応そうゆう雰囲気にはなって……」 あれから課長が私への愛撫を再開し心も体も深い快楽へと行きかけた時、突然携帯電話が鳴った。 課長も一瞬手の動きが止まったが無視を決めたのか私への刺激を緩めることがなかった。 だかしかし……。 またすぐに鳴る電話。 さすがに私も気になる。 「か……課長……電話に……あっ……出た方が……」 刺激されてるので私の言葉は途切れ途切れ。 でも課長には聞こえたらしく。 「無視しとけ」 そう言いながら愛撫を続ける。 「あっ……イヤッ……」 「お前は俺だけに集中してればいい」 「でも……」 切れては鳴る電話。 気にならないわけがない。 課長は奥田物産の副社長だ。 何かトラブルがあったのかもしれない。 課長もやっぱり気になるのだろう。 くそっ!と小さく呟くと 「ちょっと待ってろ」 と私にキスをして体を離した。 私は体を起こし課長の後姿を見ていた。 寝室を出た課長は大声で文句を言っている。 きっと相手は碓氷さんだろう。 すると床からまた違う着信音が聞こえ自分の携帯だと気づく。 散らばった服を見てなんだか急に恥ずかしくなってきたが慌てて携帯を探す。 今日は竣工式があったので携帯をポケットに入れていたのだ。
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