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発信者は山下さんだった。
また恥ずかしさが私を襲う。
課長がまだ戻ってくる気配がなかったので私は携帯に出た。
「もしもし……」
先程までしていた行為を悟られないようなるべく冷静に話したつもりだったが……。
「あれ?もしかして最中だった?」
たった一言しかしゃべってないのに見事に当てられてしまう。
「そんな訳な……いですよ。さ……最中だったら出られる訳ないじゃないですか!」
完全にしどろもどろ。
してましたってバレバレだ。
「だよね。あの奥田が許すわけないか」
電話の向こうで山下さんが笑っているのが予想できる。
「じゃ丁度良かった。今から会場に戻れるかな?」
「えっ?」
「嫌さ……クライアントが松本さんに挨拶したいって騒いじゃって。社長に君がいないのがばれそうなんだよね」
きっと私がいない間に山下さんは色々フォローしてくれてたのだろう。
山下さんも私もサラリーマン。
雇われてる身だ。逆らう事は出来ない。
でもな……。
私は寝室のドアを見つめた。
課長がそれを許してくれるだろうか?
「松本さん?」
電話口で山下さんの声にハッとする。
するとドアの方から足音が聞こえてきた。
「その件に関しまして検討いたします」
私はそう言うと慌てて電話を切った。
きっと山下さんは笑っているだろう。
だけどそんな事知ったこっちゃない。
私は電話をベットの下に置くと急いでベットに潜り込んだ。
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