第1章:南帆1(ユメトゲンジツ)

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第1章:南帆1(ユメトゲンジツ)

苦しい、辛い、もういいよね? 許してくれるよね? わかってるよ、うん、うん…ごめんね。 待っててね、私、行くから… 待って追い越さないで! ねぇ!ちょっと! 待っててばぁーーーーーっ!! 「あー…最悪…。」 寝覚めも、夢見も、髪も 彼女の言った通り最悪だった。 「いい加減この夢…はぁ~」 彼女はぎょっとした ソレから視線を逸らし大きく溜息をついた。 そう… 天気も最悪だったのだ…。 彼女はうんざりした顔で 携帯のトップ画面見て 目を細めた。 ・・・着信26件。 「はぁぁ~・・・もう…!…」 溜息を吐いた瞬間、 携帯がブルブルと鳴った。 冷ややかな視線で携帯を握り 拳に一瞬グッと力を入れ、 手の中で震える携帯を『ポイッ』 布団の上に投げた。 彼女は洗面所へ向った。 (夢も現実も安らげない…) そう心の中で、夢を思い返していた。 彼女の表情は変化し 鏡の中の彼女は無表情、 目に生気が消えた。 その後フゥっと 彼女の目にまた生気が戻った。 また鏡の自分を見つめ (夢も現実も同じか…) クスッと彼女は苦笑した。 部屋へ戻り身支度を整え、 コップ一杯の水を飲み、 携帯をポケットに入れ部屋から出た。 彼女は着信の相手に 電話をすることはなかった。
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