第2章:回想1(ナホ)

2/3
前へ
/717ページ
次へ
高校2年の春にクラス替えがあった。 私は美羽とクラスが離れる事が怖かった。 クラス発表の前日は不安で落ち着かなかった。 美羽は『私達は親友だから離れないよっ』と 私を励ますメールをくれた。 発表当日、学校へ向う足取りは重かった。 学校前にある桜坂で、 私は前進してるんだろうか… と思う程のスピードでのろのろと歩く。 (もうだめ…体が重い…) 立ち止まって桜の木を見上げた。 (桜っていつ満開になるんだっけ…) 「桜の満開っていつだっけか?」 (ん?私声に出てた…?  ひぁ~超恥ずかしい…) 私は慌てて俯き顔が火照るのを感じた (独り言ですっスルーして下さいっ!) 「4月?5月かな?」 「だっけ?」 (ぇ…会話?) ホッと息を吐いた。 (同じ事を考えてたんだ…) 気になったが声の方を、 振返る勇気はなかったので、 声が遠ざかっていくのを待った。 やっと校内に足を踏み入れた時、 「南帆!私達は離れられない運命なのよ!」 と叫びながら抱きつく美羽の言葉に 人生二度目の大声で歓喜した。 「やったぁ!」 新しい教室へ美羽と仲良く向かった。 これから二年間クラス替えは無い。 もうあの地獄のような不安な夜はない。 自然と顔は綻び、私は舞い上がっていた。 教室に入り美羽と相談して、 前後で座ることにした。 椅子へ腰かけると同時に美羽の方から 「ねーナホ!」 と呼ばれたので 「はいはい!なぁに?」 と返事した。すると 「はぁ?」 と美羽の声ではない声が返ってくる。 「ぇ・・・・」 視線を美羽に向けると、 美羽が手をブンブンして 『私じゃないよっ』 と声を出さずに口をパクパクしている。 私は美羽の前方へ視線を移した。 私と視線があった女の子は睨んでいる。 「何であんた返事してんのよ」 それに驚き目が点になった。 そして小声で答えた。 「ぇ…ナホって…」 「そーよ!だから!  何であんたが返事してんの!」 美羽は慌てて間に入った。 「この子の名前、南帆なの!  そりゃ呼ばれたら返事するよ!?」 「はぁ?私はっ…!」 その声を遮るようにガタッ!と 椅子を鳴らして、一人の男の子が振返る。 彼は私達に視線を向けて、 「俺ナオちゃんっ よろしくねっ」 『ナオちゃん』はニパッと笑顔で言った。
/717ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加