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私達に自己紹介した『ナオ』は
橘 猶人(タチバナナオト)
あだ名が『ナオ』だった。
ナオは正面へ向き直り椅子に座って
「お前うるせー、眠れねぇ」
と机に伏せた
「大丈夫?南帆?」
美羽は心配そうに私を見ている。
「うん…ごめんね。
美羽と勘違いして返事しちゃった…」
「うんうん。でもびっくりしたぁ。
初めて見る子も多いのにさー…
南帆が大声で返事するんだもん」
「うん…私もびっくりしてる」
「まぁ~私は解ってるよ~南帆ちゃん♪
美羽と一緒で嬉しかったんでしょ?」
私は小さく頷いて笑った。
どうやらナオの横で私を睨んでいた子は
ナオとクラスが離れたので、
ナオに会いにこのクラスへ来たらしい。
でも肝心のナオは寝ていた。
その子は寝ているナオを起こそうと
ずっとナオを呼んでいたのだ・・・
と、美羽が昼ご飯を食べながら
説明してくれた。
「でも恋する乙女はすごいよね~
休み時間になると橘に会いに来るし…
積極的というか根性あるっていうか…
恋してますって感じ!?」
興奮気味の美羽はそう言って
お弁当の卵焼きに噛り付く。
「でさっ聞いた話だけどっ!
一年の頃は、女の子が入れ違いで
橘に会いに来てたって!噂もあってさ…
橘って…浮気者らしいよ…」
美羽は最後の『浮気者』を小声で言った。
私はそんな美羽の話を聞きながら
「うんうん」「へー」「そうなんだ」
と相槌をしてお弁当を食べる。
すると美羽は不意に私に聞いてきた。
「南帆はどう思う?」
「何を?」
「橘のこと」
「どうって?」
「私そういう天然南帆も好きだけど、
乙女としては心配だわっ」
「なんで?」
美羽がお箸で私を指して言い直す。
「南帆は橘って好きなタイプ?」
「ううん」
「即答ですか…それはなぜ?」
「うーん…逆だから」
「え?」
「私の苦手なタイプ」
「たま~に黒い南帆ちゃんでるよねぇ」
私はふと思い、
「じゃあ美羽はタイプなんだ?」
「ないな」
そして美羽が溜息を吐きながら言った。
「私達の恋はいつになるやら…」
私は噴出して笑った。
「私が美羽のお嫁さんになってあげるよ?」
「えー。私もお嫁さんがいいな~」
二人が並ぶ姿を想像し首を振りながら
「ないな」
「だね」
と呟く・・・
私達の恋はまだ遠い。
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