第2章:回想1(ナホ)

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私達に自己紹介した『ナオ』は 橘 猶人(タチバナナオト) あだ名が『ナオ』だった。 ナオは正面へ向き直り椅子に座って 「お前うるせー、眠れねぇ」 と机に伏せた 「大丈夫?南帆?」 美羽は心配そうに私を見ている。 「うん…ごめんね。  美羽と勘違いして返事しちゃった…」 「うんうん。でもびっくりしたぁ。  初めて見る子も多いのにさー…  南帆が大声で返事するんだもん」 「うん…私もびっくりしてる」 「まぁ~私は解ってるよ~南帆ちゃん♪  美羽と一緒で嬉しかったんでしょ?」 私は小さく頷いて笑った。 どうやらナオの横で私を睨んでいた子は ナオとクラスが離れたので、 ナオに会いにこのクラスへ来たらしい。 でも肝心のナオは寝ていた。 その子は寝ているナオを起こそうと ずっとナオを呼んでいたのだ・・・ と、美羽が昼ご飯を食べながら 説明してくれた。 「でも恋する乙女はすごいよね~  休み時間になると橘に会いに来るし…  積極的というか根性あるっていうか…  恋してますって感じ!?」 興奮気味の美羽はそう言って お弁当の卵焼きに噛り付く。 「でさっ聞いた話だけどっ!  一年の頃は、女の子が入れ違いで  橘に会いに来てたって!噂もあってさ…  橘って…浮気者らしいよ…」 美羽は最後の『浮気者』を小声で言った。 私はそんな美羽の話を聞きながら 「うんうん」「へー」「そうなんだ」 と相槌をしてお弁当を食べる。 すると美羽は不意に私に聞いてきた。 「南帆はどう思う?」 「何を?」 「橘のこと」 「どうって?」 「私そういう天然南帆も好きだけど、  乙女としては心配だわっ」 「なんで?」 美羽がお箸で私を指して言い直す。 「南帆は橘って好きなタイプ?」 「ううん」 「即答ですか…それはなぜ?」 「うーん…逆だから」 「え?」 「私の苦手なタイプ」 「たま~に黒い南帆ちゃんでるよねぇ」 私はふと思い、 「じゃあ美羽はタイプなんだ?」 「ないな」 そして美羽が溜息を吐きながら言った。 「私達の恋はいつになるやら…」 私は噴出して笑った。 「私が美羽のお嫁さんになってあげるよ?」 「えー。私もお嫁さんがいいな~」 二人が並ぶ姿を想像し首を振りながら 「ないな」 「だね」 と呟く・・・ 私達の恋はまだ遠い。
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