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回想2(センパイ)
1週間程で私はクラスの女の子と
少しだけど話せるようになっていた。
もちろん美羽効果だ。
そしてまた一人友達ができた。
美羽と同じ水泳部の
花岡 実里(ハナオカミノリ)
美羽から実里を紹介された時、
私は顔を赤くし、
「よろしく」と小さな声で言った。
(そこは美羽の時と同じ)
そんな私の様子を見て実里は
「あらあら、可愛いお嬢さんじゃないの~」
と私を上から下まで見る
すかさず美羽が
「実里、おばちゃんみたいだよ…
南帆が怖がってるじゃん」
そう言うので慌てて私は
首をブンブン振って
「怖くない」と言った。
「美羽、この子を私に譲ってよ。
家にお持ち帰りするから」
と私を抱きしめながら言った。
(美羽と似てるかも…)
人見知りする私でも、
実里にはすぐに打ち解けた。
自然と三人でお弁当も食べていた。
美羽も実里も部活で知り合い意気投合。
廊下を三人で歩いていると、
話しかけてくる子もいた。
でも私は二人の横で黙って
それを見ている事が多かった。
特に男の子と二人が話している時は
苦手だったので遠巻きに見ていた。
たまに「何て名前?」と
私に声を掛ける子もいたけど、
二人は私が黙っているのを見かねて
「あげないよ!」
「怖がってるでしょ!しっし!」
「南帆っていうの。いい子だよ」
とフォローしてくれた。
「二人とも凄いな~」
私は溜息交じりに言った。
そんな私の様子を見て二人は考え込むと
「良い事思いついた!」と言って
昼休みに私の手を取り上級生の教室へ向う。
「クラスの子でさえまだ慣れてないのに!
上級生なんて無理だよ~!」
半泣きの私に大丈夫大丈夫!
と言いながら上級生の教室へと向かった。
「・・・・いますか?」
とそのクラスの先輩に聞いた後
「ありがとうございます」
とペコンとお辞儀をして、
また私の手を取って、
校舎庭へ引っ張って行く。
私は逃げ出したい気持ちのせいか
引っ張られる体は少しのけ反っていた。
頭を上向にした私の視線は桜に止まる。
(あ…満開だ…)
それを二人に言おうとした時…
「せんぱーいっ!」
二人が叫んだ先には庭のベンチで
一人男の人が座っている。
二人に気が付きこちらへ視線を向ける。
「怖いよ二人とも」
と、優しそうにゆったりと笑顔で言った。
私は『せんぱい』から視線を逸らし
ベンチの傍にある桜を見上げていた。
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