回想3(オニイチャン)

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静かな空気が流れる。 校内から笑い声が聞こえる。 私は本を拾い先輩へ渡した。 先輩は片方の手でそれを受取り もう片方の手で口を塞ぎ黙っている。 親友達は口をパクパクさせ 私達を凝視している。 缶ジュースから流れ落ちる滴が 握った拳に流れ落ちていた。 私はそれを見て首を傾げた。 実里が声を絞り出すように 「な、な・・・・」 美羽はハッとした表情をし 弾ける様に叫ぶ。 「な、何やってんの!?  てか何言ってんの!  ち、違うわ!何話してたのよ!?」 かなり動揺している二人を見て 私は不思議そうに答えた。 「親友の話だよ?」 「ちっ違うでしょっ!」 やっと言葉が出たのか実里が続けて叫ぶ 「キ、キ…!て…お、お、お、…」 実里は言葉をまた詰まらせ顔を赤くする。 何を驚いているのか解らない私は 『お』がつく言葉を言ってみた。 「お兄ちゃん?」 二人は一斉に先輩を見る。 私も釣られて先輩を見ると 「あの…少し待ってくれるかな…」 両手で真っ赤な顔を覆いながら 頭を抱えている。 しばらくして… 落ち着いたのかジュースを飲む二人 先輩も前髪を掻き上げ本の砂埃をはらい 「二人に誤解させたね」 そう呟いて私へ向き直る 「何故お兄ちゃんなの?」 ゆっくりと慎重に言葉を選ぶように 私に聞いてきた。 「親友にって…言ってくれましたが…」 少し戸惑った後、 「親友になれるほど先輩の事を理解してない…  話せるようになれたのも最近の事で…  私は部活の後輩じゃないし…  親しく話せる男の人は先輩が初めてで…  だから…兄なら先輩のような人かと…  そう呼びたいって思ったら声に出てました…」 それを静かに聞いていた先輩は 「そう…わかった。いいよ」 私の頭を撫でて言う。 先輩は美羽と実里に向直り 「あのね…」 二人は先輩を食入るように見ている。 そんな様子の二人に溜息を吐き。 「やってないよ」 それを聞いて二人は胸を撫で下ろす。 「で、ですよね~あはは…」 美羽と実里は顔を引きつらせて笑った。 私は何のことか解らず首を捻る。 実里が悪戯っぽく 「じゃあ私達も呼んじゃう?」 美羽と顔を向合わせて言った。 「それは断る」 先輩が美羽より先に返事をした。 二人は抗議する。 「差別です」 「ズルいです」 すると先輩が一言 「水泳部の先輩ですから」 (そうでした・・・)
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