回想4(ハナミ)

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美羽の『先輩天然伝説』と題する 話を聞き二人で笑い合っていると 先輩の声がした。 「南帆ちゃん、美羽ちゃんこっち」 声の方へ視線を向けると先輩が手招きし、 その横に知らない男の子がいた。 三人の方へ駆け寄ると 美羽が最初に切り出した。 「先輩いい場所ですね!ナイスです!」 「俺じゃないよ彼ら」 と言って二人を指す。 私達は指された二人を見る。 長身で均整のとれた体に 短い黒髪の男の子と、 栗色の髪で人懐っこく笑う 男の子が立っていた。 「二人は水泳部の來田と渡辺、  君達と同じ二年生だよ」 と言われ私はペコリと頭を下げた。 「この子は南帆ちゃん、  美羽ちゃんと実里ちゃんの親友だよ」 と紹介してくれた。 二人は私と同じようにペコリと会釈する。 続けて思い出したかのように 「あぁそうそう」 という先輩を不思議そうに四人は見る そしてゆっくりと… 「南帆ちゃんは俺の妹だから、  触ったら殺すよ」 と後輩二人ににっこり笑顔で言った。 (ひぇ~殺すんですか…お兄ちゃん…) 私に視線を移し 「実里ちゃんは?」 優しい笑みで聞いてきた。 「ぁ…」 初対面の人を前にすると声が出ない。 私を気遣って美羽が 「遅れてきます」と答えた。 その様子で何かを悟ったのか、 先輩は腰を下ろし 「おいで。南帆」 自分の隣の席をポンポンと叩いて私を呼んだ。 私は初めて『南帆』と呼び捨てにされ、 恥ずかしくて顔が赤くなった。 言われるがままに先輩の隣に腰を下ろし、 美羽をちらっと見ると 美羽はニヤニヤしていた。 他の二人はそれを気にする様子もなく その場に座った。 すると來田という男の子が先輩に 「先輩、俺の親友を呼んでいいですか?」 と、問い掛けた 先輩は少し間を置いて 「なんで?」 コップに飲み物を入れながら聞き返す。 でも來田は困った顔をして返事をしない。 横で見ていた渡辺が 「先輩、そいつ俺も知ってます。いい奴ですよ」 代わりに答えた それを聞いて先輩は 仕方がないという表情で 「いいよ」 そう言った後、心配するように私を見たので 私は『大丈夫です』というように 無言で頷いた。
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