回想4(ハナミ)

5/5
前へ
/717ページ
次へ
無視されてショックだった。 美羽と実里へ視線を向ける。 二人は渡辺君と話し笑っていた。 せっかく美羽と実里が… 私の人見知りを気遣って 参加させてくれたのに… ここで落ち込んで黙ってしまうと 二人に心配をかけてしまう。 二人の気持ちが無駄にならないように… 私は決意し來田君に話し掛けた。 「來田君の親友は私達と同じ高校なの?」 來田は攻撃的な鋭く光る目で私を見る その圧迫感に怯んだ私は黙り込んだ。 「・・・・」 來田が何か言おうと口を開いた時、 「來田」 冷たい低い声に遮られた。 來田君をすごい剣幕で睨む先輩だった。 私はこの状況は自分のせいだと… 慌てて來田君に 「ごめんなさい。沢山質問して」 顔を伏せて謝った。 それでも先輩の声色は変わる事無く 「そうかな?初対面で質問するのは当然だよ」 「・・・・」 二人の空気がピリピリと伝わり (私がどうにかしないと、何か言わなきゃ!) 私は焦って大声で 「き、來田君は!老けてるよねっ!」 その声は大きく裏返り、 人生三度目の大声だった。 そっと周りに視線を向けると、 渡辺君は俯いて肩を揺らし、 美羽と実里は手で口を押えていた…。 先輩は呆気にとられた顔をし 『老けてる』と言われた本人は コップを持ったまま放心していた… (ごめんなさい…泣  言葉が見つかりませんでした…) 「あ、あのう…老けてるじゃなくって…  大人っぽいかな?…あれ?違うかな…」 と小さな声でフォローした。 それを聞いて渡辺君、美羽、実里は もう我慢できないと言わんばかりに 大笑いしている。 ブーーーー!ぎゃはははははは!! 「フォローになってねぇ!」 と拗ねたように來田が言った。 でも私は來田君の自然な言葉に 嬉しくなり顔が綻む。 來田はそんな私を見て 「変な奴」 と呆れた風に言った。 それは聞き捨てならないと 「妹を変人と一緒にするな」 と先輩が睨んで言う 大笑いしていた三人は笑いが止まり (あんたが一番変人だから) と言う冷ややかな視線で先輩をみた… 『よかった』と安堵し、 桜の木を見ようと振り返る。 桜は満開に咲き乱れ、 風に揺られている。 花びらがハラハラと散る様が美しい。 南帆が花びらの一枚を目で追っていると 花びらの向こうに視線が止まる。 『ナオ』が桜を見上げて立っていた。
/717ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加