南帆2(アレコレソレ)

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キョウは私を見て (あれ?)って思ったらしい。 (こいつ、怒ってるのか?  怒ってるな…間違いない。  顔赤くなってんぞ…) そう私は怒りに震えていた。 (私は持病あるけど、ううん、  これは持病じゃない…でもっ  ゲイって自然現象みたいなものでしょ!  好きになる対象が男ってだけじゃん!  そりゃ相手に拒否される時もあるわよ…  でも世界は広いのよ!  ゲイはあんただけじゃねぇんだよっ!) 私のアレと違って彼には希望がある。 私のアレには希望は無いのだ。 キョウは薄々、私がかなりご立腹だと 肌で感じていた。 でも何故か彼は違う事で勘違いをしていた。 彼はその時こう考えていた。 (こいつ、レズは病気じゃないって思ってんだな、  今なら俺もそう思うよ。ウンッ!  これは心や体の病気じゃないよな。  俺なんて頭がおかしいのかと悩んだよ。  こいつなんていい奴なんだ!) 完全に二人の思考はずれていた。 そして…彼は申し訳なさそうに言った。 「俺が悪かった…病気じゃないよ  コレは…ごめんなさい」 キョウの言葉に驚き、 その素直な謝罪を聞いて怒りは飛んだ (この人…私に気遣ってくれたんだ…  ゲイの事はこの人にとっては悩みだったのに…  私が怒る事じゃないよね…) 「でさ…こんな俺だけど、どうする?」 彼は笑顔で続けて言った 「俺の結論から言うと、君は合格なんだよね!」 私は即答した 「私もあなたは合格です」 考えるより先に言葉が出たのだ。 良くも悪くも勘違いで同居が成立したのだ… 二人で物件を決めるのは早かった。 今の物件を一目見て気に入ったのは私だった。 キョウはそれほど拘りは無く 間取りさえ良ければOKだった。 私が今の物件を気に入った理由は 物件横の桜坂。 部屋からは桜並木がみえ絶景だった。 桜が風に舞い散るさまを眺め、 あの頃を思い返す。 私の心が温かくなりチクリと痛かった・・・。
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