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結局そのまま、その日は一言も喋らなかった。黒川さんは、人を遠ざけているっていうか、避けているっていうか・・・。とにかく、話しかけにくいオーラが出ていた気がする。
だから他の人もあとから話しかけに来たけど、それっきり誰も話しかけに来なくなった。
その日の帰り道、黒川さんが一人で帰ろうとしているところを見つけた。
「あ、黒川さん!」
私が呼び止めると、少しビクッと痙攣したあとこちらにそっと振り向いた。
「一緒に帰らない?」
私がそう言うと、黒川さんは少し驚いた様子で、すぐに小さく頷いた。
「・・・・。」
「・・・・。」
やはり何も話すことがない。というかお互い話そうともしていない。私は無理に話をふるのが苦手だから、無理して話しかけようともしないでいる。黒川さんもそうなのかもしれない。
と思ったら、急に黒川さんから口を開いた。
「あの!あ、あなたは・・・大切な友達は・・・いますか・・・?」
「え?」
黒川さんを見ると、少し震えていた。
「え、と。大切な友達は・・・いないんだよね。話すぐらいの友達ならたくさんいるけど、そこまで仲良くしたいっていう人はいないっていうか。適当につるむ人としか考えれないんだよね。」
「そ・・・そうなんですか・・・?」
私は頷く。
「ごめんね、なんかひどい人に見えるよね・・・。って、実際そうだよね。」
黒川さんが首を振る。黒い髪が大きく揺れる。
「・・・なんかさ、女子って表で仲良くして、裏では悪口ばっかり言ってるっていうの、多いじゃん?そういうのから逃げて・・・ていうか、皆がそうしてるんじゃないかって疑って、信用できないんだよね。」
「そう・・・なんですか・・・。」
「うん・・・。」
その日の帰りの会話は、そこで幕を閉じた。
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