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次の日、また黒川さんは俯いて過ごしていた。
「黒川さん、おはよう。」
「!・・・おはようございます」
「・・・なんでそういえば、なんで敬語?」
「え!いや・・・・馴れ馴れしいじゃないですか、そういうの・・・。」
「そんなことないけど・・・。」
「いえ!いいんです、敬語にさせてください・・・。」
「う、うん・・・。」
黒川さんは対人恐怖症とかそう言う感じのなにかなのかもしれない。
私からリードして話しかけてあげようと思った。
少しでも心を開いてくれればいいなって思った。
その次の日も、その次の日も話しかけた。いつもと変わらない対応だったけど、ほんの少しずつでも仲良くなれてきている気がした。
そして数ヶ月が経過し、夏も近づいてきた頃、黒川さんが相談を持ちかけてきた。
「あの・・・、私、好きな人ができたんです。」
黒川さんは頬を真っ赤に染めて、私に告白してくれた。私は、その言葉に驚いたが、少しでも黒川さんの力になりたくて話を聞く。
「え、誰!?」
私が笑顔でそう聞くと、黒川さんは数秒の間を置いて、いつもよりも小さい声でそっと
「・・・岸浦寛人くん・・・です。」
と言った。
岸浦寛人と言えば、真面目で大人しくてクールな感じがする眼鏡男子だ。黒川さんが岸浦のことが好きだなんて知らなかった。
「知らなかったなー!で、告白するの?」
「うん、そうしようと思って・・・。それで、見てて欲しいの。」
「告白するところを?」
「うん、お願い。影から見てて欲しいの。」
黒川さんは真剣な顔をして話してくれた。相変わらず俯いているけれど、何ヶ月も一緒にいたからなんとなくわかった。
「うん、見てるよ。頑張って!」
その日の放課後、黒川さんは校舎裏に岸浦を呼び出した。私は校内で校舎裏が見える場所から眺めていることにした。
今恐らく告白しているところだろうと思う。
私は空き教室からずっと眺めている。
結果を今か今かと待ちわびている。
そして・・・!!
「おい!誰だ!!勝手に空き教室に入っているのは!!!」
教師が空き教室のドアを開けて叫んだ。まずい、バレた!!!
「ほぉ、岡崎か。生徒指導室に来い!!!」
「え?ちょ、ちょっと待ってください、今大事な・・・」
「言い訳は後で聞いてやる。ほら、早く!!!」
教師が教室に入って、私の腕を掴んで強引に引きずり出そうとする。
「・・・・そんなぁ」
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