第1話

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長すぎる。たかだか空き教室にいただけでなぜそこまで説教されなきゃいけないんだ。 しかもそれ以外の話もしてきた。成績だとか友人関係とか、そんなの今しなくてもいいだろうに。 日はすっかり暮れてしまった。当然告白の話も終わっているに違いない。 私が大きなため息をついて玄関に向かった。 「あ」 「あ・・・」 黒川さんに遭遇してしまった。まずい、見てなかったこと、言わなきゃ・・・ 「見てました・・・?」 「え、あの、」 「見てませんでしたよね。いませんでしたよね。」 「ち、違うのこれは・・・」 「いいんです。・・・それより!オーケーされたんです。」 黒川さんは満面の笑みで私にそれを報告する。 「え!ほんと!?やったじゃん!!」 「はい!やりましたよ!!」 黒川さんが初めて顔を上げて、私と話をした瞬間だったと思う。 次の日から、黒川さんは岸浦一筋で会話をしていた。 誕生日、成績、友人関係、住所、去年の写真などの話ばかりしていた。 本当に好きなんだな。岸浦のこと・・・。 岸浦の話をしている時の表情は、今まで見たことないほどに輝いていた。 そんな黒川さんの話を聞くときが、とても楽しくて仕方なかった。 それからというもの、黒川さんは少し明るい人になっていった。 友人関係はまだ未熟だけど、岸浦と一緒に仲良く話していたり、私とお出かけしたりと、毎日が楽しくなった。 ・・・そんなある日。 黒川さんがいつもより暗い表情で登校してきた。 「く、黒川さん・・・?」 「あの、岡崎さん。・・・放課後、屋上に来てくれませんか?」 「え・・・?ど、どうし」 「お願いします。・・・話したいことがあるんです。」 昔みたいに俯いて話すその姿は、見ていられなかった。 「・・・うん、わかった・・・。」
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