第1話

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その日の放課後、清掃が終わったあとにすぐ屋上に行った。 そこには、柵の向こうの景色を見つめる黒川さんがいた。 「黒川さん・・・?」 呼ぶと、頭だけこちらに向けて、 「ありがとうございます、来てくれて・・・。」 と言った。 「で、どうしたの?話って・・・」 「・・・昨日、岸浦くんと別れたんです。」 「え・・・?なんで!?だってあんなに仲良くしてたじゃない!」 「うん・・・そうなんですけど。岸浦くんは、遊びで私と付き合ってたって噂が流れていたんです。」 「そ、そんなのデタラメに決まってるよ!!」 「いいえ、違うんです。本人に確認したら・・・やっぱり、本当だったみたいなんです。」 私は目の前が真っ暗になる感覚があった。 あんなに・・・あんなに大好きだったのに。あんなに大切に思ってたのに。あんなに仲良くしてたのに。それが嘘だったなんて・・・。 やっぱり、男子も変わらないのかもしれない。 偽りの、表裏がある関係。 やっぱり、人を信じるのは怖い。相当な覚悟がなきゃいけないんだ。 私は何も言えず、その場に俯いた。 「・・・・それで、岸浦くんから別れの話をされるのが怖くて、自分から別れてほしいと言ってきたんです。・・・やっぱり私は、誰からも好かれちゃいけない人なんですよね。」 「そ、そんなことない!!私が」 「岡崎さんも!・・・そうじゃないですか。」 「え・・・?」 「とぼけないで!!あなただって、私が告白するところ、見ててくれなかったじゃない!」 その言葉が胸に突き刺さる。 違うのに。違うのに。傷つけた。 「だ、だから・・・それは違うの・・・」 「何が違うのよ!本当のことじゃない!!私が告白するところなんて見たくなくて、逃げたんでしょ!!それで・・・頃合を見計らって玄関に行こうとして・・・遭遇したんじゃない!!」 「だ、だから違うの!!」 黒川さんがそんなに怒るところなんて初めて見た。その姿に圧倒されて、私はうまく言葉が言えなかった。 「岸浦くんは・・・私の事、これっぽっちも好きじゃなかった!岡崎さんも・・・私と偽りの関係を築いてた・・・!!私はどこへ行っても好かれないんだ!!!」 どこへ・・・行っても・・・?
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