第1話

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どれぐらい眠っただろう。ふと目を開けると、真っ白の天井があった。 自分の体を見てみる。真っ白のベッドに自分の体が横たわっている。 足や腕に包帯がぐるぐる巻かれていて、少し痛みを感じる。 体が重くて持ち上がらない。まだ周りの景色がぼんやりとしていて、夢の中にいるみたいだ。 そして周りの声が聞こえるようになったのは、しばらくしてからだった。 「目が覚めました!!!」「大丈夫ですか?見えますか?」「痛くありませんか?」 看護師と医者が数名私を囲む。私に何があったんだろう・・・。 あぁ、そういえば、黒川さんが飛び降りようとして・・・私がそれを止めて・・・。 あれ、普通なら死ぬよね・・・?じゃあ、私って今死んじゃったのかなぁ・・・。 今見えているもの、全て幻なのかな。もう現実に戻れないのかな。 黒川さんに全部、話してあげられなかったな。 そう考えると、不意に涙がこぼれてきた。 熱い。 目頭が熱い。 目から流れてくる涙が熱い。 「・・・っ」 声が出た。とても悲しくなった。 もうこのまま死んでもいいかなとか。 私みたいな最低なやつ、生きてなくてもいいかなとか。 そんなこと思って、そっと目を閉じた。 「岡崎さん!!!」 急に私を呼ぶ声がした。その声にはっと目が覚める。 再び目を開けると、黒川さんが大粒の涙を流して私を見つめていた。 一粒、二粒と、黒川さんの涙が私の頬に落ちてくる。 「黒川・・・さん・・・」 私がかすかに声をあげる。すると黒川さんは顔を歪めて 「なんで・・・なんで私なんかを・・・」 と、泣き声で言った。 そんな黒川さんに、私が言えることはたったひとつだけだ。 「そんなの・・・」 私が、ずっと思い続けていたもの。 「友達だからに、決まってるじゃん。」
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