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「辰兄が格好いいのはわかるけど、それだけじゃ無いだろ?必ずしも顔が良いからモテるとは限らんだろ?
俺だって、そんなに酷いツラじゃ無い筈だ!一体、何が違うって言うんだ?」
「センスの問題だな」
「センス?このスーツに問題があるのか?」
言いながら隆円が、慌てたように自分のスーツに目を向けた。
けして普通のサラリーマンが着るようなスーツでは無い。
着る人によっては、お洒落でリッチな風格が漂うスーツである。
だが、隆円の場合、高そうなスーツを着たヤクザ屋さんにしか見えない。
「まあ……そこはあえて否定しないけど、そのセンスじゃねえよ。
格好いい奴はカッコいいセンス。モテる奴はモテるが故のセンスを持っているんだよ」
「……何となく言ってる事は、わかるような気はするが、まるで禅問答だな……」
そう言うと、隆円は何か思い付いたようにニヤリと笑った。
「じゃあ俺は、女に惚れるセンスはあるわけだ。
辰兄には女に惚れるセンス無いだろ?」
「そこも否定出来ないな」
「あっ!でも一人だけ……」
言いかけた隆円ではあったが、その一言で辰也の顔から笑みが消えた事に気が付くと、慌てて話題を変えた。
「そう言えば、辰兄がこの町に帰って来て三年になるけど、この三年……辰兄に女っ気無いよな?気のせいじゃ無いだろ?どうしたんだ?」
「……女はもう卒業したよ」
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