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「辰也がボケるなんて珍しいな。
私との再会が嬉しすぎて動揺したか」
「そう言う事にしといてやるよ。
しかし、相変わらずハイテンションな奴だな……
で、この子は美加の娘か?」
「うん。娘の桃華。もうすぐ小三……
私に似て可愛いだろ?」
「桃華ちゃん。こんにちは」
隆円が横から桃華に声を掛けたが、桃華は隆円の顔を一瞬だけ見ると、すぐに視線を外し辰也を見つめた。
「ん!? どうした?
つるぴかのオジサンが怖いのか?」
「───」
今度は辰也が桃華に話し掛けたが、桃華は無言で辰也を見つめたままである。
「ゴメン。
ちょっと人見知りの激しい子なんだ」
そう言うと美加は
「大丈夫。怖いおじさんじゃ無いからね」
言いながら、桃華の頭をいとしげに撫でた。
「……美加も、ちゃんとママやってんだな」
先程の騒々しさとは打って変わり、優しい母親の顔を見せた美加に、感心したように辰也が呟いた。
「出来の悪い母親だけど、桃華は私の宝物だもん」
美加の言葉に、優しげな笑みを浮かべた辰也が、無言で美加の前にコーヒーを出した。
「桃ちゃんは何が飲みたい?」
桃華に向かって微笑みながら辰也が尋ねたが、桃華は無言のままだった。
だがしばらくすると、自分を見つめ続ける辰也の視線に根負けしたように
「ママと一緒が良い」
小さな声で答えた。
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