8/12

155人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「凄いなぁー 桃ちゃんはもうコーヒーが飲めるのか……ミルクいっぱいに入れたカフェオレにしようか?」 辰也の問い掛けに、桃華が首を横に振った。 「桃華はコーヒーが飲めない筈だけど……  この子、私に似て頑固者なんだ。  ……コーヒー出してくれるかな」 困ったように笑いながら美加が言った。 「美加ネエ……  ハルから話しは聞いてるよ。  その…何だ…大変だったな。  少しは落ち着いたのか?」 「……んん……マジでボロボロ……  この前、旦那の三回忌が終わったんだ」 美加は隆円の問いに答えると大きくため息をついた。 ハルと言うのは近所の花屋の娘の晴美。隆円の同級生である。 辰也。美加。隆円。晴美。 幼少の頃から四人の結束は固く、高校を卒業すると町を離れ、音信不通に近い美加ではあったが、何かある度に晴美とは連絡を取り合っていた。 辰也と隆円が、二年前に美加が夫を亡くした事を知っているのは、晴美からの情報だった。 「まあ、人生いろいろ………  人それぞれに山あり谷ありだからな。  でも、美加ネエの」 「ダテにつるぴかじゃ無いな。  坊さんらしい台詞が板に付いてるぞ」 隆円の言葉を遮るように、美加が明るく笑った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加