155人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
美加が泣いているのを桃華が心配そうに見つめていた。
「ママ、何で泣いてるの?
………美味しいよ
ママも飲んで良いよ」
小さな声でそう言って、ミルクセーキの入ったグラスを美加に差し出した。
「ママにもくれるの?
桃華は優しいね」
泣き笑いの表情を浮かべて、ストローに口を伸ばしかけた美加の額で『パチン』と小気味良い音が響いた。
辰也が美加の額を指で弾いたのである。所謂デコピンと言うやつだ。
「痛っ!!
辰也、てめえ何すんだよ!」
「それは桃の為のスペシャルドリンクだ。
お前が飲んだら金取るぞ」
「えっ!? おごりなの?」
「お前から金取るわけ無いだろ」
美加が一瞬嬉しそうな表情を浮かべた。
「当たり前だ!
でも、一口ぐらい良いだろ!」
「ダメだ」
「良いじゃん! ケチ!!」
ストローに口を伸ばそうとする美加の額を、辰也が人差し指で制止する。
「娘が飲んでる物を味見するのは母親の義務だ」
「俺が作ったんだ。
………不味いわけないだろ」
……頭上で繰り広げられる二人の攻防に
「クスクス」と桃華が笑った。
最初のコメントを投稿しよう!