155人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「美加。そう言えばお前
『ただいま』って言って、ここに入って来たよな?」
「うん………
この町で、この子と二人
人生やり直そうと思って」
「……そうか。
帰って来たのか。家は?
この辺に住むのか?」
「兄貴のアパート。
あいつ、親父が持ってた土地に、賃貸のアパート建てただろ?家賃はタダで良いって言ってくれたんだ」
「何だかんだ言って、やっぱり兄妹だな。兄ちゃんも良い所あるじゃん」
美加の両親は美加が中学生の頃に、交通事故で他界しており、五歳年上の兄が親代わりだった。
美加が高校卒業後、この町に寄り付かなかったのは、この兄と反りが合わなかった為である。
「相変わらずシケた奴だよ。借金頼んだら、そっちは断られた。
まあ、奥さんが、かなりしっかりした人だから、家賃がタダって言うだけ、ありがたい話しなんだけどね。
お金無いから、早く仕事探さなきゃ。
何か良い仕事無いかな?」
明るい口調ではあるが、どこか疲れたような様子だった。
「旦那さんは生命保険とか入って無かったのか?」
隆円の問いに、美加が口を開きかけたが、桃華を横目でちらりと見ると無言で頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!