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「で、新メニューは?」
「焼きうどんとフレンチトースト」
「………ふーん」
「何だ、素っ気ない返事だな」
「ナポリタンが食いたいなぁ
…ってもう作ってんじゃん!」
「作ってるのはナポリタンだから安心しろ」
そう答えた時、辰也は既にフライパンを振っていた。
「十一年ぶりだ。
先ずは懐かしの味だろ?」
美加が笑顔で頷いた。
「あのカッコいいオジサンと、つるぴか。ママの子供の頃からのお友だちで、カッコいいオジサンのパパが作る、ナポリタン大好きだったんだよ」
桃華に説明する。
美加の両親と、辰也の父親、松福寺の住職である隆円の父親、晴美の母親。それぞれが幼馴染みの同級生だった。
中学生の頃、両親を亡くした美加にとって、親同様に接してくれた大人達なのだ。
『cafe BILLY』のナポリタンは、美加が三日に一度は食べていた物だった。
「辰也。ところで何で、焼きうどんとフレンチトースト?」
「ウチのナポリタンの具材覚えてるか?」
「えっ!?……ベーコン、ピーマン…
玉ねぎにマッシュルーム…かなぁ」
「同じ具材で作ってる。
親父がナポリタンのみで店やって、成り立ってたワケだから、ランチタイムはナポリタン専門でもOKなんだけど、親父と一緒じゃ芸が無いだろ?
かと言って、店は俺一人。
こんな店でも、ランチタイムは二回転こなして三十食近く出るから、同じ材料でスピーディーに作れるものがベストなんだ」
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