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辰也は覚えているのだろうか……
私がまだ、泣き虫な幼稚園児だった頃
一歳年上の、太っちょのイジメっ子に、私がイジメられて泣いている時に言った言葉を……
アイツは何度、イジメっ子に突き飛ばされても負けずに、最後は自分の身体よりも、遥かに大きなイジメっ子を殴り飛ばして泣かせた。
そしてその後、擦り傷と泥まみれな顔で私に言った。
「大人になったら、美加は俺のお嫁さんになるんだから泣くな!……俺は泣き虫は嫌いだ!」
まだ幼稚園児だったけど、私の初恋もファーストキスも辰也が相手だ。
まあ……さすがに、あのとき交わした結婚の約束も、ファーストキスも無効だとは思うけど……
考えてみると、辰也とは不思議な関係だ。
幼稚園の頃から私はアイツの彼女で、小学生の頃も自他共に認める彼女だった筈だ。
ところが中学生になると、アイツはとっかえひっかえ、あちこちに女を作り、いつの間にか私の彼女としての地位は消滅していた。
よくよく考えてみるとひどい奴だ。
考えているうちに今も、何だかムカついてきた。
私は缶ビールを飲み干すと、再びタバコに火を点けた。
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