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「だって辰也は、ある意味、桃華のパパみたいなもんじゃん!
小学生最後の授業参観だからさ、辰也に行って貰いたいんだ」
「───」(……パパ!?)
辰也は普段はクールな男なのだが、その一言に一瞬だけデレっとした表情を浮かべ、すぐに顔を引き締めた。
「……ダメかな?」
「仕方ないな。行くよ」
ぶっきらぼうに答えたが、内心はかなり上機嫌だった。
「辰ちゃん、スーツ持ってる?」
辰也の言葉に桃華は大喜びしたが、ちょっと不安そうに辰也に訊ねた。
辰也の服装はジーンズにTシャツ、着込まれた感のあるクロコダイル革のベスト姿で、桃華はこれ以外の服装の辰也を殆んど見た事が無かった。
ただし、これには理由があった。
元々『cafe BILLY』は辰也の父親が営んでいた店で、西部劇に出て来る安酒場のような店内は父親の趣向である。
店での彼の出で立ちは、テンガロンハットにリザード革のウエスタンブーツ、ジーンズにクロコダイル革のベスト姿であった。
八年前、父親の他界を機に店を引き継いだ辰也は、父親の着ていたベストをも同時に引き継いで、店での制服がわりに着ていたのである。
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