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「フン、どうせエイドリアンの方が金色の綺麗な髪だと思っているんだろ?なに、遠慮することはないさ」
俺が皮肉めいた口ぶりでそう言ってやると、ミッシェルは首を横に振った。
「い、いえ!決してそのようなことは思っておりません。私は…コーネリアス様のこの艶やかな黒髪をとても綺麗だと常々思っております」
「お世辞か?上手いな」
「お世辞なんかじゃありません…っ!コーネリアス様(の髪)が大好きでございま…あっ」
そこまで言いかけて、ミッシェルはブラシを持っている手を止めて慌てた様子で目を伏せた。
ミッシェルの頬は、ほのかに赤く染まっている。
「え?何?何だって?」
ミッシェルの言葉をちゃんと聞き取れなかった俺は、再び聞き返す。
フルフルと首を振り、「い、いえ…大した事では…ご、御座いませんので…」と言って、再度ブラシをかけるミッシェル。
「フゥン」
問い詰めることも面倒臭くなった俺は、興味無さげにそう返事をした。
20分後、ミッシェルは俺の髪を綺麗に整え、机に置いてあった冠を俺の頭に乗せる。
漆黒の髪の上でピカピカに光り輝いている冠は、この国の王子だという印だ。
しかし、ものすごくどうでもいい。むしろ煌びやか過ぎて目が痛い。
そんなことを考えていると、ミッシェルが「コーネリアス様」と話しかけてきた。
「準備が整いました。それでは、申し訳ありませんが旦那様にパーティの最終チェックを頼まれておりますので私はこれで…」
「うん、ご苦労」
俺がそう言うと、ミッシェルは俺に頭を下げて颯爽と部屋を出て行った。
あいつは忙しい男だな。
時計を見ると、もう夕方の6時か…。そろそろパーティも始まる頃だろう。
親父は迎えに来ると言ってたが、俺はさっさとパーティに行くことにした。早く終わらせて寝たいからな。
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