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部屋を出ると、黒を基調とする騎士服を着た、いかにも強そうな男が俺の前を歩いているのに気が付いた。
こいつは、ヴェルトール。国の軍事機関のリーダーだ。
剣の腕は流石、目を見張るほどの実力で、この国ではヴェルトールに勝てる者はいない。
こいつの出で立ちは強面で、まさしく悪役といった感じを醸し出している。しかし、性格は非常に生真面目。そしてお硬い頭のおっさんだ。
「ヴェルトール!」
俺はそう呼び掛けながらヴェルトールに近づく。
俺に気付いたヴェルトールは廊下の隅に寄り、片脚を地面に付け、俺に跪く。
「坊ちゃん、お久しぶりです」
「うん、最近見なかったが戦争か?」
「はい。カッサンドロス軍との国境戦がありましたので、そちらの遠征に行っておりました」
「ご苦労だったな。で、どうだった?」
「滞りなく済みました」
だろうな。ここらへんの国では最強だと言われている俺の国の軍だ。しかもヴェルトールが指揮を取るとなると、勝てる奴は中々いないだろう。
こいつがいる限りこの国も安泰だな。
「見事だぞ、ヴェルトール」
「有難う御座います。坊ちゃんにそう言っていただけるだけで、旅の労がねぎらわれます」
ヴェルトールは顔を上げて、フ…と柔らかい笑みを浮かべた。
ん?ヴェルトール、見ない内に少し歳をとったか?だがそれが更に渋みを増していて、いい、とてもいい。
「…坊ちゃん?」
何も言わずにただヴェルトールを見つめる俺を心配したのか、ヴェルトールが声を掛けてくる。
ハッと我に返り俺は首を横に振った。
「ん、あぁなんでもない。ところでお前はこれから何処に行くんだ?」
「旦那様に呼ばれて、大広間に向かうつもりです」
「大広間?」
たしか今日開かれる俺のパーティとやらも、大広間で行うと聞いているが…。
もしやこいつも親父に出席するよう言われたのだろうか?
まぁいい、どうせ大広間まで一人で暇だったしな、ここはヴェルトールと一緒に行くとしよう。
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