王子、勇者になる。

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「ヴェルトール、俺も大広間に用事があるから一緒に行ってくれ」 「本当ですか!喜んでご一緒させていただきます」 これ以上ないくらいに喜ぶヴェルトール。そんなに俺と行くのが嬉しいのか? ふむ…悪くない。人に好かれるというのは気分が良いものなんだな。 「ところでお前、今日のパーティに出席するんだろ?」 無駄に広い屋敷の廊下を歩きながら、俺はヴェルトールに話しかける。 ヴェルトールはというと、俺の半歩後ろを歩いている。 うん、よくわかってるじゃないか。 こいつは俺のことをガキの頃から知っているからか、俺の性格をよく心得ているようだ。俺は無礼な態度を取られるのが大嫌いだからな、無性にイライラする。 「はい。しかし坊ちゃんも参加されるとは…珍しいですね」 「う、うるさい!気まぐれだ!」 チェスセットのためだと知られたら、俺の面目丸潰れじゃないか…! 何としても俺の威厳が損なわれるのだけは阻止しないとな…。 話題を変えるため、俺は積極的にヴェルトールに話しかける。 「今日はいったい何のためのパーティか聞いてるのか?」 「私は、坊ちゃんのためのパーティだとしか聞かされておりませんが…」 「そうか。じゃあパーティの出席者は?」 「詳しくは知らされておりませんが、確か旦那様やエイドリアン坊ちゃんなどの親族様は、参加されるとか…」 「え、エイドリアン!?」 クソッ…想定外だ…。 今からエイドリアンと顔を合わせることになるのか、胸糞悪い。 昔から一つ年下の従兄弟のエイドリアンとは仲が悪い。あいつとは一生わかり合えない気がする。なんて言うか…エイドリアンとは馬が合わないというか…うん。 とにかく、顔を合わせればお互い憎まれ口しか叩かないから、あいつといると疲れるのだ。 そんなことを考えながら歩いていると、従兄弟のエイドリアンに遭遇した。 なんてこった…。 「やあ、コーネリアス。…それとヴェルトールさん…」 「今晩は、エイドリアン坊ちゃん」 ヴェルトールはエイドリアンに軽く頭を下げる。
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