王子、勇者になる。

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パーティとなれば早く支度をしなければな…。なんて面倒臭いんだ。 面倒臭いが仕方がない、チェスセットのために用意するか。 そう思った俺はとりあえず風呂に入ることにした。 「おい、ミッシェル!風呂に入るぞ、用意しろ」 と、廊下に向かって大声で言い放つ。 俺の掛け声から1秒もたたないうちに「失礼します」と言いながら、細身の美形が可憐で優雅な立ち振る舞いで入ってきた。 こいつの名前はミッシェル。ここの城に仕えている執事のトップ、つまり執事長だ。 しかし完璧な上にクールな男なので、なんとも面白味が無い。毎日のようにこいつを困らせようとからかっているのだが、今だにこいつの整った顔が崩れたところを俺は見たことがない。 いつか見てやりたいものだ…。 「コーネリアス様、本日はお風呂にお湯を張られますか?」 「いや、いい。今日はシャワーで済ます」 「承知致しました。すぐにご用意致しますので、少々お待ち下さい」 ミッシェルは俺の部屋にあるシャワールームに足を向けてカツカツと歩き出す。 しばらくしてシャワールームから出て来て手際良くタンスからバスローブとタオルを取り出し、俺の前に差し出した。 「お待たせ致しました。用意が整いましたのでどうぞ」 「遅いぞ、どれだけ待たせる気だ。使えない男だなまったく!」 ミッシェルが風呂を用意するのにかかった時間はおよそ1分ぐらいだった。 決して遅くはない。むしろここまで手際の良い執事はそうそういないだろう。 だがしかし俺はとことんこいつを虐めて虐めて虐めまくって、こいつの鉄仮面のような表情を潰してやりたいのだ! そんな俺の横暴な態度に嫌な顔一つせず、ミッシェルは俺に頭を下げた。 「申し訳ありません、私の修行不足です。これからはもっと精進致します」 ほんと面白くない男だ…。 「あー、わかったわかった。もういいからお前はそこで待ってろ」 「かしこまりました」 俺はミッシェルの持っているバスローブとタオルを無視して、シャワールームに向かった。
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