王子、勇者になる。

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「何をしている?命令が聞けないのか?」 俺がそう声を掛けてやると、我に返ったミッシェルはとても動揺していた。 「わ、私が…で、ございます…か?」 「なんだ文句でもあるのか?」 「も、文句など…ございません…」 「なら早くしろよ、大事な主人が風邪引くぞ。ほら、カモーン」 俺は意地悪そうに口角を歪め、ミッシェルを急かしたてる。 ミッシェルはというと頬を真っ赤にして唇を噛み締め、俯いている。 「ん?どうした、何か問題でも?」 「い、いえ…し、失礼します…」 意を決したミッシェルは、俺のすぐ前まで近づきタオルで俺の頭を優しく拭いた。 まさか本当にするとは思っていなかった俺は、ミッシェルの行動に呆気に取られ身動き一つとれなかった。 口をぽかんと開けて方針状態の俺に、ミッシェルは、ものすごく申し訳なさそうに話しかける。 「こ、コーネリアス様…無礼は承知で申しております…ですが…どうか髪だけでご勘弁を…っ」 執事の分際で俺に願い事をするなど無性に腹立たしいが、まぁ…今日はミッシェルのいろんな表情がいっぱい見れたしな。今日はこれで許してやろう。 鉄仮面ミッシェルは本日付でぶっ潰れたようだ。 今日からは赤仮面ミッシェルと名付けよう。 「わかったよ、お前はもう下がって良い」 深く頭を下げるミッシェルに、俺は優しくそう言ってやる。 「…ありがとうございますっ…!それでは、失礼致しました…」 バスローブを俺に渡すと、ミッシェルは軽く頭を下げてシャワールームを後にした。 顔は赤いままだったが。
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